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うまさの源流

鉄田憲男氏VS奈良大学名誉教授の鎌田道隆氏。
二人の奈良の達人が、奈良の農・林・食の魅力を語りつくします。

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【食】奈良は日本の食文化発祥の地 (鉄田憲男)

伝承料理研究家で、伝承料理博士の奥村彪生(おくむら・あやお)さん曰く、「奈良は日本の食文化発祥の地」である。確かに、飛鳥時代や奈良時代に都で食されていたもので、今に伝わる食べ物は数多い。

牛乳の飲用は飛鳥時代に始まったとされ、これを煮詰めた古代のチーズ「蘇(そ)」も作られた。奈良漬は奈良時代の「加須津毛(かすづけ)」がルーツだし、そうめんも、奈良時代に中国から伝えられた「索餅(さくべい)」が原形である。

時代を下ると、お茶は平安時代に弘法大師が中国から持ち帰った種を室生(宇陀市)でまき、製法を伝えたことに始まるという。清酒は室町時代に奈良市の正暦寺(しょうりゃくじ)で初めて作られた。饅頭は南北朝時代、中国から渡来した僧・林浄因(りん・じよういん)が日本で初めて作った。今も饅頭の元祖として、林(りん)神社(奈良市漢国町)に祀られている。

茶粥(ちゃがゆ)は、奈良時代の752年に始まった東大寺二月堂修二会(お水取り)の練行衆の食事として供されてきた。「大和の朝は茶粥で明ける」といわれるほど日常食として浸透している。

奈良の茶飯奈良茶飯(ちゃめし)をご存じだろうか。お茶で炊いたご飯に大豆が入る。東大寺や興福寺の僧坊で古くから食されていた伝統食だ。これが江戸時代に庶民の間に広まった。浅草や川崎宿で提供され、評判を呼んだ。井原西鶴の『西鶴置土産』にも「ちかごろ浅草金竜山の茶屋で一人前五分の奈良茶飯を売りだしたが、こぎれいな器に盛り付け、町人たちによろこばれている」と記されている。炒った大豆と米とお茶だけで作れる簡単で美味しい料理で、栄養バランスに優れ腹持ちも良いというヘルシーメニューである。

私は自宅でよく奈良茶飯を作る。時間をかけて大豆を炒るのは面倒なので、節分によく出回る「ソフト炒り豆」を買ってくる。お茶はペットボトルのほうじ茶を使う(緑茶よりほうじ茶の方が香ばしく仕上がる)。炊飯器にお米を入れ、水のかわりにほうじ茶を目盛りまで注ぎ、上にパラパラと豆をまくだけである。お好みで塩やだしの素や料理酒を加えてもいい。しばらく経つと香ばしい匂いが漂い、あつあつの奈良茶飯が炊きあがる。

奈良は日本の食文化発祥地なのに、ユビキタスな(どこへ行っても食べられる)名物料理が少ない。美味しくて、こんなに簡単に作ることができる奈良茶飯は、もっと普及してほしいものである。

鉄田憲男氏の顔写真 /

鉄田憲男氏 1953年和歌山県生まれ。1976年大阪大学経済学部卒業、
1978年早稲田大学文学部卒業、同年南都銀行入行。
現在 同行公務・地域活力創造部に勤務、NPO法人「奈良まほろばソムリエの会」専務理事、奈良佐保短期大学講師。
奈良県の魅力向上に貢献したとして2011年、第2回あしたのなら表彰(奈良県知事表彰)を受けた。tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

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